前回「観客の頭にない要素を持ち込む」という話をしました。
その方法の例としてしりとりを紹介しました。
しりとりを使うと、意味のつながりがないワードを持ってくることができるんでしたね。
今回は、観客の頭の中にない要素を持ってくる方法をもう一つ紹介します。わりと上級者向けです。
手順
手順は
- お題とは関係なく、あらかじめ、面白みを含んだ要素を自分の中に用意しておく
- お題が出たら、そのお題に合うよう無理やり変形してお題とつなぐ
です。
「あらかじめ」というのは、お題が出る直前というよりは、
別に大喜利をしているわけではない、普段の日常生活ことを指しています。
普段から、「面白い」もしくは「うまく使えば面白いかもしれない」と思ったものを、自分の中でストックしておく、ということです。
携帯のメモ機能なんかを使うと良いでしょう。
このあたりの手間をかけなきゃいけない分、上級者向けだと思います。
回答例
実際にサイトに投稿された例で見ていきましょう。
回答者が、ここで解説するような考え方を本当に辿ったかどうかはわかりませんが、
「この回答に辿り着くためには、例えばこういう方法がある」という観点で見ていただければと思います。
旅行のお土産としてもらった、いらないもの
「矢島美容室 THE MOVIE MUSIC ALBUM」
はい。まったくお題から出発していないことがよくわかる回答です。
「旅行」とも「お土産」とも全然関係ないですからね。
まず「矢島美容室」自体が「昔流行ったもの」ということで、「そんなのあったなあ」という笑いを引き起こす要素を持ち
さらに「THE MOVIE」で「映画作ってたのかよ」という余計な情報をもたらし
さらに加えて「MUSIC ALBUM」というニッチを突くことで、いらなさを強調しています。
お題とは関係なく、「矢島美容室 THE MOVIE MUSIC ALBUM」自体が、面白さを持っているわけですね。
ちなみに手順2の「お題に合うように無理やり変形する」ですが、今回は「モノ」を答えるお題なので、変形させずともこれで成立しています。
中には、この回答を面白いと思わない人もいるかもしれませんが、そのあたりの感覚は個人に依存するものですから
回答自体よりも理屈の方を覚えて帰っていただければと思います。
次の例行きます。
旅行のお土産としてもらった、いらないもの
ヒヤシンス
これも同じです。響きの一発勝負です。「ヒヤシンス」です。変な発音ですね。
大喜利が始まる前から自分の中で「ヒヤシンス」を準備しておけば、折を見て発動できるわけです。
遊園地に遊びに行ってびっくり!何があった?
ヒーローショーで怪人が出て来て、司会のお姉さんが「大変だ、こういう時はみんなであるある探検隊を呼ばなくっちゃ」と怪人と二人でレギュラーのネタをして終わった
「みんなで」まで完璧にヒーローショーのくだりをなぞっているのに、直後に唐突にレギュラーのフォーマットに突入している構成が良いです。
これも、「遊園地」から一生懸命考えて「レギュラー(あるある探検隊)」を持ってくるのは結構難しいと思います。
「レギュラー」は、矢島美容室と同じで「そんなのあったなあ」という面白要素を持っているので、
あらかじめ自分の中で「レギュラー」を用意しておくことで、使えるようになるわけです。
あとはお題に合うように、お題の「遊園地」から「ヒーローショー」、さらにそこから「お姉さん」「怪人」という要素を引っ張ってきて、「レギュラー」と組み合わせると、この回答にたどり着けることになります。
あと細かいですけど、「あるある探検隊」より「レギュラー」という言葉の方が面白いので、回答内できちんと「レギュラー」を使ってるのは評価が高いです。
「あるある探検隊」が十分コンビ名っぽいし、なんならこれが流行ってた頃、コンビ名が「あるある探検隊」だと勘違いしていた人もいるでしょうに
実際のコンビ名が全然関係ない「レギュラー」であることが、ちょっと面白いからです。
オープンして3日で潰れた温泉旅館。なぜ?
神は始めの日に温泉を作り、次の日に温泉に浸かり、その次の日に温泉を破壊した。
神話です。「温泉旅館」から一生懸命考えても神話は出てこないでしょう。
「神は始めの日に…」という神話っぽい言い方は、回答者本人の中にストックとして持っていないと出しようがないです。
前回の方法論との関係
前回紹介したしりとりの方法と今回の方法は、ある意味で対になっていると言えます。
お題を「発想のスタート地点」、観客の頭の中にない面白要素を「ゴール地点」とすると
前回紹介したのは素直にスタートからゴールに向かっていく方法です。
それに対して今回紹介した方法は、ゴールからスタートに向かう方法と言えます。
これが上級者向けなのは、そもそもお題が出る前から考えておく必要があるからです。
お題が出てから考え始めると、どうしても
・時間に制限がある
・お題から離れた発想をするのが難しい
といったデメリットがあります。
一方、今回の方法は
・事前にたっぷり時間をかけて強い面白要素を収集できる。
・お題から離れた発想を持った状態から考え始められる
というメリットがあります。
是非皆さんも、普段から面白要素を収集しておいて、いざ大喜利の場で放出するようにしてみてください。
まとめ
これまでで、大喜利の回答を作る時の基本的な考え方の枠組みをお話しました。
次回からは、もっと具体的に、面白い回答を作るテクニックを一つずつお話ししていきます。
自分の得意なテクニックを見つけてみてください。
下に、練習用のお題をつけておきます。
制限のあまりないお題ですが、逆に言えば回答に使える要素がほとんどありません。
面白要素を自分の中から持ってくる必要があるでしょう。
普通の大喜利の場なら答えづらくて良くないお題ですが、今回の練習には丁度いいはずです。
また、プロの大喜利を見てみることも大いに参考になりますよ。
Posted by 岡竜之介